男は中年の域を、すこし入ったくらいだった。
アキオと名乗った。

真面目そうに見えるのはメガネのせいだけではないだろう。
言葉少なだが、その気遣いがあらわれる話し方に好感が持てた。

「なおちゃんは、普段はお仕事は?」
「神田の小さな出版社の事務をやってます」
嘘をついた。

「へえ、本を作ってんの」
「ええ、まあ」
「おれね、カメラ屋だったんだけど、今さ、ビックカメラとか量販店に押されて、だめになっちゃったんだ」
「あらぁ、大変ね。街の写真屋さんみたいな?」
「そうそう、家族写真とかね、七五三とか撮ってたよ」
「そういうの東京じゃ見なくなったわね」
「根津とか千駄木あたりならまだあるかな」
明治文豪のいた街角の名前だった。
谷中とあわせて「谷根千(やねせん)」と呼び習わされている。

アキオは中年太りの裸体をベッドに横たえた。
あたしはかぶさって、唇を舐める。
ひげは濃くないが、剃り残しがあった。
ペニスはまだ勃起しておらず、陰毛の中に潜んでいる。
アキオも興に乗ってきてあたしの背中に腕を回し、強く抱きしめてきた。
「ああん、いたぁい」
「ごめん、ごめん」
170cmもない、中背のよくある男性だった。
あたしとどっこいの体格なので、足を使った愛撫もしやすい。
すると、ペニスが頭をもたげ、硬さを増してきた。
あたしもゆっくりとそれに触れ、もみしだいてあげた。
大きくはない。
しっかり硬い。
たぶん、十センチぐらいの小ぶりの持ち物だった。
これ以上は大きくならないようだった。
カリは張っていて、形がいい。
「入れる?」
あたしは、訊いてみた。
「ああ、入れてほしい」
騎乗位で嵌(は)める。
簡単にあたしはアキオを滑りこませた。
短い分、いい刺激を感じる。
「ああ、いい」
「いいの?」
「あなたの、ちょうどいいわぁ」
ほんとに、そう思った。
一昨日だったか、Shojiのペニスは長すぎて、痛かったし、あまり良くなかったのだ。
後ろ手をついて腰だけで出し入れしてやると、その硬さがGをこすって、ヤバイ。
ともすれば、抜けやすいけれど、潮を噴きそうになる。
「やん、すっごい、いいっ」
「なおちゃん」
じゅぴ、じゅぴ、じゅぴ…
あたしの腰が、激しさをまして上下する。
そうせずにはおれないのだった。
アキオも下から突き上げてくるので、けっこう、深いところまで当たっている。

後背位になり、アキオが余裕で差し込んでくる。
「あはぁ、やばぁい」
「なおちゃん、締まるよ」
「アキオさんのも、硬くって、気持ちいい」
「あ、あっ」
ぶすっ、ぶすっと突き刺すように腰が入って、あたしがベッドの縁(へり)に押し上げられる。
アキオは片膝を立てて、腰を入れている。
あたしは支えを失って顔だけで体を支えていた。
「なおちゃんの、すっごく濡れて、びしゃびしゃだよ」
「いやん、言わないで、そんなこと」
恥ずかしかった。
しかし、小さいことはいいものだとも思った。
こんなにフィットするペニスもめずらしい。
ほどなくして、アキオは勝手に果ててしまったらしい。
「中に出しちゃったよ。ごめんよぉ」
だいたい、男は確信犯でもそう言うのだ。
「いいのよ。あたし、お薬飲んでるから」
そう言いながら、後始末に余念がないあたしだったけれど。