お盆に帰省してセックスをするというのも「バチ当たり」を犯しているようで妙に燃える。

ずっとまえに、親類の告別式で遠縁の手癖の悪い男に言い寄られて、喪服のままでセックスをしたときもすごく感じてしまった。
その男とは以後、何度か街で会ったけれど、もはやマンネリ化していて、ときめかなくなったのであたしの方から距離を置くようにした。
やはり背徳を犯すシチュエーションが必要なんだなと感じたものだった。

幼いころ、あたしたち家族は横手市に昔、住んでいた。
そこが父方の故郷であり、母は仙台市の生まれだった。
父の仕事の関係で、あきる野市に引っ越し、あたしは高校時代をそこですごした。
ちょうどバブルがはじけたころだった。
卒業しても就職難で、あたしは水商売に身を落としていた。
お酒が飲めたので、けっこううまくやっていけた。
そして体を提供することで、よい生活ができることも覚えた。
複数の愛人になり、都心に住まうことも許されたのだった。
そして、会員制愛人バンクに登録し、今の生活になった。
この生活がいつまで続くのか心配は尽きないが、父母とも疎遠になった今日、先のことは考えないようにしている。
そういえばヨコヤマナオコというあたしの人格の大半を占める人物が、あたしを上手にコントロールしてくれている。


震災後、初めて秋田に足を踏み入れた。
横手市は見違えるほど大都市になっていて、あたしはまったく要領を得なかった。
ここに切符を買って来たのも、頭の中でヨコヤマナオコがしきりに訴えるからだった。
「オマエハ、ココデ、アリヨシマモルニ、アウ」
有吉衛とは、あの遠縁の男にほかならない。
なぜ、ナオコが有吉を知っているのかわからなかったが、あたしはその言葉に従ってここに来た。
有吉の体は、あたしに妙に合った。
身内同士のなんかが呼び合うのだろうか?

しかし、もう十年以上も会っていない相手である。
遠縁とはいえ、住んでいる場所もなにも知らないのだ。
ところが、足が勝手に歩き出す。
体がその場所を知っているかのようだった。
そして体の芯から潤ってくる。
こんなことかつてなかった。
じわりとショーツのクロッチが沁み、汗ではない液体で内ももまで滑りよくなってくる。
歩くことが性感を高めるかのようだった。
どこかトイレに入らないととんでもないことになりそうだった。
「ナプキン、あったかしら?」
生理にはまだ間があったがエチケットとして用意はしていた。
そうこうしているうちに、足が止まった。
前には「有吉」と表札のある一戸建ての家があった。
あたしは呼び鈴を押した。
しばらくして、五十がらみの男が引き戸を開けて顔を出した。
あたしはその男の顔に見覚えがあった。
彼もそうだったのだろう。
「なおちゃん?」
「ええ。ごぶさたしてます」
「なんでまた…」
「なんだかわからないけど…足がこっちに」
「ま、入りなよ」
明らかに有吉は、好色の表情を浮かべてあたしを招き入れた。
家の中は薄暗く、線香のにおいがした。
「オヤジの新盆でね」
彼は仏間に案内した。
立派な仏壇の前に、盆灯籠に明かりがともって回っている。
あたしは勧められた利休鼠の色の座布団にひざを折り、座った。
「おふくろは七回忌を終えたんだ」
独り言のように彼は言った。
「でも、驚いたなぁ。なおちゃんが来てくれるなんて。よくここがわかったね」
「なんとなく…」
「なんとなく、おれが忘れられないって?あれからずいぶんたつね」
麦茶をグラスに注ぎながら言う。
「あれから、あきる野市に引っ越したの」
「そうだよね。まだ高校生だった…なおちゃんは。今はなにしてんの?」
「OL…」
「そっかぁ。結婚はしていないんだね」
「うん。相手がいなくて」
「仕事がいそがしいんだろ。でも大人になったね。お化粧なんかして」
「有吉さんは、結婚していないの」
「こんな田舎者のところにだれも来てくれないさ」
「お仕事は?」
「警備員をやってたんだけど、おやじの介護で、なかなかまとまった仕事につけなくてね、今は無職」
そのわりには、家も小ぎれいだった。
「なおちゃん、あの、また、いいかな」
「え、なにが?」
「おれ、なおちゃん見てたら、もう、たまんなくって。あの頃を思い出してさ」
何を言っているのかはわかった。
あたしも、そういう商売柄、拒む理由もなかった。
「いいわよ。でも汗だくだから、お風呂かシャワーを借りたいわ」
「そ、そうだね。用意するよ」
立ち上がった有吉のズボンの股間はもうテントが張っていた。
ずっと一人でがまんしてきたのだろう。
このあたりじゃ、風俗らしきものもなさそうだし。

(つづく)