セックスには大きく分けて二つあると、あたしはボスから教わった。
「してもらうセックス」と「してあげるセックス」だ。

あたしは職業上、後者の「してあげる」ことを念頭にセックスを行なってきたが、客によってはあたしが「してもらう」喜びを与えてくれることもあった。
どうやら、女に「してあげたい」と閨房(けいぼう)で思うのは男性の欲望の一つでもあるらしい。
たとい相手が商売女でも、自分のテクニックで「いかせる」ことができたら、男性の支配欲は満たされるのだから。
だから世間一般に、男に花を持たせようと商売女(にかかわらず)は「いったふり」をするものだ。

とはいえ、あたしはよく客にいかされる。
本当なのだ。
だから、あまり芝居をしなくていい。

男性の方が、手練手管において勝っている場合も多々あるのだった。
特に、あたしの所属するエージェントのコールガールと遊ぶ殿方は、家柄も申し分なく、そこそこの教養や、経済力に余裕のあるハイソな客ばかりだった。
若くして、事業に成功し、心の安らぎを正当に求めたい男性は、配偶者や恋人ではなくコールガールにそれを求める。
俗にいえば「割り切」っているのだった。
子どもが欲しいとかならば、ちゃんとお嫁さんを探せばいいのだ。

セックスはビジネスに通じるものがあるらしい。
相手を読み、相手を喜ばせ、後には自分も喜ばさせてもらう。
「三方良し」ではないが、そういったやりとりを楽しむセックスがあっていい。
ただ射精すればいいというなら、そういうサービスを格安で施す場所がある。
あたしたちのエージェントを選択する人々は、それなりの資格がないと楽しめないのだろう。
もちろん、あたしが客を選べる立場にはない。
必ず、どんな方でもお相手するのがプロフェッショナルだからだ。

あたしは「ケバ」い装いはしない。
下品は、もっとも嫌われるのだ。
だから、あたしは男性の夢をかなえるような姿かたちにつくる。
それは、彼らにとって、かつての担任の先生だったり、隣のお姉さんだったりするのだった。
だから、シックなスーツ姿や、フェミニンなワンピース姿で会う。
決して、「ドン引き」されるような水商売ルックはしない。
髪を脱色したり、長いまつげで小さい目をごまかしたり、おへそや乳首にピアスが貫いていたら、男性は萎えてしまうのだから。

Na・O・B・O・Nは、あなたのラブ・ドール(love doll)でありたい。