Na・O・B・O・N

気ままに生きてます。だから気ままに書いていきますね。

あたしを知っている人はするどい。

新緑がまぶしい。
山登りには最高の季節ではないだろうか?
あたしは、一人、二ノ瀬ユリを歩いていた。

何人かハイカーにすれ違い、あいさつを交わす。
見ず知らずの人とでも、これは山のルールなのだった。

ふと、茂みに人影が動いた。
用を足しているのだろうか。
男性が向こう向きに立っている。
ここはうっそうとしていて、鳥の声と、葉擦れの音しか聞こえない。
男性は手を激しく動かしているようだった。
明らかに、小用ではなく、マスターベーションの最中のようだった。
私はドキドキして木陰から見ていた。
サングラスをしていて、若そうだった。
手元には赤黒い立派な勃起が顔を出している。
ズボンのファスナーから引っ張り出してこすっているのだった。

あたしは思わず、
「手伝いましょうか?」と声をかけてしまったのである。
ぎょっとした表情になっただろう。
目は見えないが、動きが止まった。
でもペニスは隆隆と別の生き物のようにこちらを向いている。
「そのまま、じっとしてて」
あたしは彼に寄り添うように立って、勃起に手を伸ばした。
「あんた…」
やっと口を開いた彼。
「しっ!」
後ろを人が通る気配がした。
あたしは隠そうと彼に密着する。
遠ざかるハイカーを確認して、しごいてやった。
熱い肉が手のひらに感じられた。
亀頭はパンパンに膨れ上がり、つややかに陽光を反射している。
美しいペニスだった。
男は上を向いて、瞑想するようにじっとしていた。
そしてあたしの頭を撫で、髪の匂いを嗅いでいる。
ふん、はぁ…
硬いそれは、私の手になじんで、しなった。
若い反発力が、あたしも潤わせた。
「ああ、たまんない」
「姐さん、名前は?」
「なおこ」
「なおちゃんか。なおちゃん、おれもう」
「いくの?いって」
あたしは握る手に力を込めて、上下に早くしごいてやった。
「はっ、はあっ」
がくがくと男性は痙攣して持たれている大木を背にのけぞるようにして果てた。
おびただしい、白い液体が青々としたシダ類の上にまき散らされた。
「あふう」
「すごい…」
あたしは手に伝う熱い液体に感動していた。
ティッシュで後始末をして、ズボンに道具をしまい込んだ彼は、こういった。
「山の精と交わって、生気を得ようと来たんだ。あんたが山の精だね」
「違うわ。通りすがりの変態女よ」
「ありがとう」
「じゃあ、あたしはこれで」
「そうか、また山で会おう」
「うん」
あたしたちは反対方向に別れた。

山は不思議な場所だ。

セックスには大きく分けて二つあると、あたしはボスから教わった。
「してもらうセックス」と「してあげるセックス」だ。

あたしは職業上、後者の「してあげる」ことを念頭にセックスを行なってきたが、客によってはあたしが「してもらう」喜びを与えてくれることもあった。
どうやら、女に「してあげたい」と閨房(けいぼう)で思うのは男性の欲望の一つでもあるらしい。
たとい相手が商売女でも、自分のテクニックで「いかせる」ことができたら、男性の支配欲は満たされるのだから。
だから世間一般に、男に花を持たせようと商売女(にかかわらず)は「いったふり」をするものだ。

とはいえ、あたしはよく客にいかされる。
本当なのだ。
だから、あまり芝居をしなくていい。

男性の方が、手練手管において勝っている場合も多々あるのだった。
特に、あたしの所属するエージェントのコールガールと遊ぶ殿方は、家柄も申し分なく、そこそこの教養や、経済力に余裕のあるハイソな客ばかりだった。
若くして、事業に成功し、心の安らぎを正当に求めたい男性は、配偶者や恋人ではなくコールガールにそれを求める。
俗にいえば「割り切」っているのだった。
子どもが欲しいとかならば、ちゃんとお嫁さんを探せばいいのだ。

セックスはビジネスに通じるものがあるらしい。
相手を読み、相手を喜ばせ、後には自分も喜ばさせてもらう。
「三方良し」ではないが、そういったやりとりを楽しむセックスがあっていい。
ただ射精すればいいというなら、そういうサービスを格安で施す場所がある。
あたしたちのエージェントを選択する人々は、それなりの資格がないと楽しめないのだろう。
もちろん、あたしが客を選べる立場にはない。
必ず、どんな方でもお相手するのがプロフェッショナルだからだ。

あたしは「ケバ」い装いはしない。
下品は、もっとも嫌われるのだ。
だから、あたしは男性の夢をかなえるような姿かたちにつくる。
それは、彼らにとって、かつての担任の先生だったり、隣のお姉さんだったりするのだった。
だから、シックなスーツ姿や、フェミニンなワンピース姿で会う。
決して、「ドン引き」されるような水商売ルックはしない。
髪を脱色したり、長いまつげで小さい目をごまかしたり、おへそや乳首にピアスが貫いていたら、男性は萎えてしまうのだから。

Na・O・B・O・Nは、あなたのラブ・ドール(love doll)でありたい。

カイヤは家に帰って行った。
あたしは、一人部屋に取り残された。
また一人になっちゃった。


昨日、あたしはカイヤを男にしてあげた。
カイヤは、何度もあたしを貫き、その都度、たくましくなっていった。
そして、さわやかに去って行った。


「もう会わない方がいいよね」
そう言ったのはカイヤのほうだった。
「あなたがそう思うのなら」
あたしも、引き留めなかった。

「さようなら、なおこ」
「さようなら、あたし」

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